◇石川の古墳群で実務想定し技術研修
能登半島地震から2年が過ぎた。復旧・復興事業が急がれる中、文化財包蔵地区での対応が事業実施の課題に浮上している。工事の途中で文化財が見つかり発掘調査が必要になれば、工程を再検討する可能性もある。日本文化財保護協会(山口寛理事長)はこうした事態を未然に防ごうと、地表に露出した埋蔵文化財(遺跡)が存在する可能性の高い地点を予測する「デジタル遺跡踏査」の普及に力を入れている。=1面参照
「復興は一秒も遅らせてはならない」。同協会の那波市郎相談役はそう訴える。災害の復旧・復興工事にスピードが求められるのは当然だが、文化財の保護もおろそかにできない。遺跡への配慮は欠かせないが、復興を止めるわけにはいかない。この問題に対処する姿勢として、同協会の鵜飼良一専務理事兼事務局長は「事前の把握が重要になる」と強調する。
事前に遺跡の位置を把握する手掛かりは、市町村が作成する「遺跡地図」だ。周知の埋蔵文化財包蔵地の分布や概要が分かる資料で、工事計画時の判断材料となる。ただ、地図を作成するには人が歩いて遺跡を調査する必要があり、調査が十分でない地域もある。人手不足や踏査時の安全確保といった課題から、現地を歩いて網羅的に調査する方法は限界があった。
課題に対応する画像解析の手法の一つとして、国や県が公開しているGIS(地理情報システム)データを活用したデジタル遺跡踏査がある。航空レーザー測量で取得した点群や既存の遺跡地図など複数のデータを重ね合わせ、地表に現れる「形状」や「起伏」といった地形の特徴から、未発見の遺跡が存在する可能性を絞り込む。地下に埋もれた遺跡までは把握できないが、古墳など地形として表出する遺跡や文化財は位置や規模の見当を付けることができる。事前に候補地を絞り込めば、調査に必要な時間やコストが抑制できる。
手法の整理に取り組んだのが、国立文化財機構奈良文化財研究所の高田祐一氏だ。遺跡調査分野で十分に活用していなかったGISデータに着目。手順を整理し現場で応用できるようにした。デジタル遺跡踏査を進める上で、高田氏は「地域ごとに公開されているデータの形式や精度が大きく異なる点」を課題に挙げる。地形や遺跡データが高精度なGISデータとして整理・公開されれば、「調査の質や精度が向上し、業務の効率化にもつながる」とみる。
実際にデジタル遺跡踏査や別の手法を活用し、遺跡地図の精度向上につなげるかどうかは、自治体に委ねられる。同協会は後押しとして、石川県内の自治体職員や企業関係者を対象に1月26、27日の2日間、「デジタル時代の遺跡調査」と題した技術研修を同県で開催。約40人が参加した。高田氏や野口淳公立小松大学次世代考古学研究センター特任准教授らが講師役を務めた。1日目は座学とGISデータ作成の実習、2日目は志賀町内の古墳群で現地実習を実施した。3Dスキャナーアプリなどを使用し、測量など実務を想定した内容を学んだ。スマホやタブレットをかざして古墳の周囲を歩く参加者の姿が見られた。
「復興工事が本格化する前に、現場で判断できる体制を整えておくことが重要」と鵜飼専務理事。「被災地の遺跡対応で工事が止まるリスクを下げる一つの選択肢として知ってもらえれば」とデジタル遺跡踏査の普及に期待する。







